PCゲームのフレームレートを向上させたいと考えた時、NVIDIAの機能が選択肢に挙がります。しかし、NVIDIAイメージスケーリングのデメリットが気になって、導入をためらってはいませんか。
NVIDIAイメージスケーリングの効果は魅力的ですが、画質の低下やNVIDIAイメージスケーリングによる遅延を心配する声も少なくありません。また、実際に導入しようとすると、NVIDIAイメージスケーリングの設定画面でNVIDIAイメージスケーリングの項目がない、あるいは特定のNVIDIAイメージスケーリングの解像度、例えばイメージスケーリングに1920x1080がないといった予期せぬ問題に直面することもあります。
この記事では、そうした皆様の疑問や不安を解消します。画質低下への対策となるNVIDIAイメージスケーリングの鮮鋭化調整、ご自身の環境に合わせたNVIDIAイメージスケーリングのおすすめ設定、そして不要な場合にNVIDIAイメージスケーリングをオフにする手順まで、分かりやすく解説していきます。
この記事を最後まで読めば、デメリットを正しく理解し、ご自身のプレイスタイルに最適な設定を見つける手助けとなるはずです。
記事のポイント
- イメージスケーリングの基本的な仕組みと効果
- 画質劣化や遅延などの具体的なデメリット
- 設定項目がない等のトラブルシューティング
- デメリットを補う鮮鋭化やおすすめ設定
画質で見るNVIDIAイメージスケーリングのデメリット
このセクションでは、NVIDIAイメージスケーリングの基本的な仕組みから、画質にどのような影響を与えるかというデメリットの側面に焦点を当てて解説します。
- NVIDIAイメージスケーリングの効果と仕組み
- 基本的なNVIDIAイメージスケーリングの設定
- NVIDIAイメージスケーリングの解像度の選び方
- NVIDIAイメージスケーリングの鮮鋭化による画質調整
- NVIDIAイメージスケーリングによる遅延は発生するか
NVIDIAイメージスケーリングの効果と仕組み
NVIDIAイメージスケーリングは、グラフィックボードの負荷を軽減し、ゲームのフレームレートを向上させるための技術です。このため、多くのゲーマーにとって魅力的な選択肢となっています。
仕組みは比較的単純で、まず実際のゲーム画面をモニターの表示能力(ネイティブ解像度)よりも低い解像度で描画します。そして、その描画された映像を、お使いのモニターが持つ本来の解像度まで引き伸ばし(アップスケーリングし)、同時にシャープネス処理を加えて輪郭をはっきりさせてから出力します。こうすることで、グラフィックボードは低い解像度で処理すれば良いため、負荷が減り、結果としてフレームレートが向上するというわけです。
言ってしまえば、これはテレビに搭載されている超解像技術に近いものです。例えば、フルHDではない放送をフルHDテレビで綺麗に見せるために使われる技術と同様の考え方に基づいています。
ちなみに、よく似た技術にDLSS(Deep Learning Super Sampling)がありますが、これとは根本的な違いがあります。DLSSがAIと専用のハードウェア(RTXシリーズに搭載のTensorコア)を利用して高度なアップスケーリングを行うのに対し、イメージスケーリングは専用ハードウェアを必要としません。そのため、GTXシリーズなど、より幅広いグラフィックボードで利用できる点が大きな特徴です。
基本的なNVIDIAイメージスケーリングの設定
NVIDIAイメージスケーリングを利用するには、いくつかの手順を踏んで設定を有効にする必要があります。設定は主に「NVIDIA GeForce Experience」というアプリケーションを通じて行います。
まず、GeForce Experienceを起動し、設定メニュー(歯車のアイコン)を開きます。次に、「全般」タブの中にある「イメージスケーリング」という項目を探し、スイッチをオンに切り替えてください。このとき、どの程度解像度を下げて描画するかの「レンダリング解像度」と、画像の輪郭をどのくらい強調するかの「鮮鋭化」の度合いもここで設定可能です。鮮鋭化については、後からゲーム中のオーバーレイで調整することもできます。
しかし、このGeForce Experienceでの設定だけでは、まだ機能は有効になりません。ここからが大切なポイントで、設定を有効にしたいゲームを起動し、そのゲーム内のグラフィック設定(または画面設定)で、解像度を先ほどGeForce Experienceで指定した「レンダリング解像度」と全く同じものに変更する必要があります。
例えば、4Kモニターを使用していて、レンダリング解像度を「2560x1440」に設定した場合、ゲーム内の解像度も「2560x1440」に指定します。こうすることで、システムは1440pでゲームを描画し、それを4Kに引き伸ばしてモニターに出力する、という一連の処理が実行されます。ゲーム内の解像度がネイティブ解像度(この例では4K)のままだと、イメージスケーリングは機能しないため注意が求められます。
NVIDIAイメージスケーリングの解像度の選び方
NVIDIAイメージスケーリングの効果を最大限に引き出すには、レンダリング解像度を適切に選ぶことが鍵となります。この設定は、フレームレートの向上率と画質の劣化具合のトレードオフの関係にあります。
レンダリング解像度は、お使いのモニターのネイティブ解像度に対するパーセンテージで複数用意されています。例えば、4K(3840x2160)モニターを使用している場合、GeForce Experienceでは以下のような選択肢が表示されるのが一般的です。
- 85% (3264x1836)
- 77% (2954x1662)
- 67% (2560x1440)
- 59% (2259x1271)
- 50% (1920x1080)
パーセンテージが低いほど、グラフィックボードの描画負荷は軽くなり、フレームレートは大幅に向上します。しかし、その分、引き伸ばす度合いが大きくなるため、画質の劣化も顕著になります。逆に、パーセンテージが高いほど画質の劣化は抑えられますが、フレームレートの向上率は限定的です。
では、どれを選ぶべきかというと、これは個人の感覚やプレイするゲームの重さによって変わってきます。データベースの情報によれば、77%程度までは画質の低下を感じるものの、プレイに支障が出るほどではないという印象です。一方で、50%まで下げると、テクスチャのぼやけなどがはっきりと分かり、鮮鋭化を適用しても劣化が気になるレベルになります。
したがって、まずは85%や77%あたりから試し、ご自身が「この画質なら許容できる」と感じる範囲で、最もフレームレートが向上する設定を探していくのが良い方法と考えられます。
NVIDIAイメージスケーリングの鮮鋭化による画質調整
イメージスケーリングを使用すると、低い解像度の映像を引き伸ばすため、どうしても全体的に映像がぼやけた印象になりがちです。このぼやけを軽減し、映像の輪郭をくっきりとさせるために用意されているのが「鮮鋭化(シャープニング)」機能です。
この機能は、GeForce Experienceの設定画面、またはゲーム中に呼び出せるオーバーレイ(デフォルトではAlt+F3キー)から、スライダーを動かすことで0%から100%の範囲で強度を調整できます。値を高くするほど、物体の輪郭が強調され、シャープな見た目になります。
鮮鋭化は、イメージスケーリングのデメリットである画質のぼやけを補うための重要な機能です。特に、レンダリング解像度を低めに設定した場合、この鮮鋭化を適切に調整することで、視認性を改善できる場合があります。
ただし、注意点もあります。鮮鋭化を過度に強くしすぎると、かえって映像が不自然に見えてしまうことがあります。輪郭がギザギザになったり、映像全体がざらついたような質感になったりするため、やりすぎは禁物です。
おすすめの設定としては、まずデフォルトの値(通常は50%程度)で試してみて、そこから少しずつ上げ下げして、ご自身の好みに合うポイントを見つけるのが良いでしょう。あくまでぼやけた部分を補うための機能と捉え、自然に見える範囲で調整することが大切です。
NVIDIAイメージスケーリングによる遅延は発生するか
フレームレートを向上させる技術を使用する際、多くのユーザーが気にするのが「表示遅延(レイテンシー)が増えないか」という点です。イメージスケーリングにおいても、この疑問は当然生じます。
まず、仕組みから考えると、イメージスケーリングはグラフィックボードが映像を描画した後、それをモニターの解像度に合わせて引き伸ばし、さらに鮮鋭化処理を加えてから出力します。つまり、通常の描画プロセスに加えて、「アップスケーリング」と「鮮鋭化」という追加の処理工程が挟まることになります。
このため、理論上はごくわずかな処理時間、つまり遅延が追加される可能性は否定できません。
しかし、この問題を考える上で非常に大切なのは、遅延の増加分とフレームレートの向上による恩恵を比較することです。イメージスケーリングを有効にすると、フレームレートが大幅に向上します。フレームレートが向上するということは、次のフレームが表示されるまでの時間が短くなるということです。
例えば、30fpsから60fpsに向上した場合、1フレームあたりの表示時間は約33.3ミリ秒から約16.7ミリ秒に短縮されます。多くの場合、イメージスケーリングによる処理で追加される遅延は、このフレームレート向上によって得られる時間短縮の効果に比べれば、はるかに小さいと考えられます。
したがって、競技性の高いシューティングゲームなどでコンマ1秒を争うような極端な状況を除けば、ほとんどのユーザーにとって、イメージスケーリングによる遅延は体感できるレベルのものではなく、フレームレート向上による快適さのメリットの方がはるかに大きいと言えます。
設定前に知るべきNVIDIAイメージスケーリングのデメリット
このセクションでは、設定段階で遭遇しがちなトラブルや、知っておくべき具体的なデメリットとその対策について、さらに詳しく掘り下げていきます。
- NVIDIAイメージスケーリングの項目がない時の対処法
- なぜイメージスケーリングに1920x1080がないのか
- NVIDIAイメージスケーリングのおすすめ設定を紹介
- 不要な場合はNVIDIAイメージスケーリングをオフにする
- イメージスケーリングに1920x1080がない場合の確認点
- まとめ:NVIDIAイメージスケーリングのデメリットとは
NVIDIAイメージスケーリングの項目がない時の対処法
NVIDIAイメージスケーリングを使おうとGeForce Experienceを開いたにもかかわらず、設定項目そのものが見つからず困ってしまうケースがあります。この問題には、いくつかの原因が考えられます。
最も可能性が高い原因は、NVIDIAのグラフィックドライバーやGeForce Experienceのバージョンが古いことです。イメージスケーリングは、特定のバージョンのドライバー(2021年11月以降のR496.76以降)で実装された機能です。そのため、お使いのドライバーがそれ以前のものである場合、設定項目は表示されません。
対処法としては、まずGeForce Experienceを起動し、「ドライバー」タブから最新のGame Readyドライバーが提供されていないか確認し、もしあればダウンロードしてインストールしてください。GeForce Experience自体が古い場合も、公式サイトから最新版をダウンロードして再インストールすることで問題が解決することがあります。
また、まれなケースですが、何らかの理由でインストールが不完全になっている可能性も考えられます。ドライバーの更新で解決しない場合は、一度ドライバーをクリーンインストールしてみるのも一つの手です。
このように、設定項目がない場合は、まずソフトウェアのバージョンを最新の状態に保つことが基本的な解決策となります。慌てずに、まずはドライバーの更新から試してみてください。
なぜイメージスケーリングに1920x1080がないのか
イメージスケーリングの設定画面を開いた際に、「レンダリング解像度」の選択肢に「1920x1080」(フルHD)が表示されなくて戸惑うことがあります。これは不具合ではなく、イメージスケーリングの仕組みを理解すると解決する疑問です。
イメージスケーリングは、前述の通り、モニターのネイティブ解像度よりも「低い解像度」でゲームを描画し、それをモニターの解像度まで「引き伸ばす」技術です。
ここで重要なのは、お使いのモニターのネイティブ解像度です。もし、あなたがフルHD(1920x1080)のモニターを使用している場合、システムは1920x1080よりも低い解像度(例えば1664x936など)で描画しようとします。そのため、レンダリング解像度の選択肢として、モニターのネイティブ解像度と同じである「1920x1080」は表示されないのが正常な動作なのです。
逆に言えば、選択肢に「1920x1080」が表示されるのは、あなたがフルHDよりも高い解像度を持つモニター、例えばWQHD(2560x1440)や4K(3840x2160)のモニターを使用している場合に限られます。
つまり、「イメージスケーリングに1920x1080がない」という状況は、あなたのモニターがフルHDであることを示している可能性が非常に高いです。これはエラーではなく仕様通りの挙動であるため、心配する必要はありません。表示されている、より低い解像度の中から設定を選択してください。
NVIDIAイメージスケーリングのおすすめ設定を紹介
NVIDIAイメージスケーリングを効果的に活用するためには、画質とパフォーマンスのバランスを取った設定を見つけることが大切です。ここでは、万人向けのおすすめ設定と、状況に応じた使い分けについて紹介します。
まずは高めの解像度から試す
データベースの情報からも分かるように、レンダリング解像度を下げすぎると画質の劣化が顕著になります。そこで、まず初めに試していただきたいおすすめの設定は、レンダリング解像度を「85%」または「77%」に設定することです。
これらの設定であれば、画質の低下を比較的小さく抑えつつ、フレームレートの向上を十分に体感できる可能性が高いです。特に、グラフィックが美麗なゲームの世界観を損ないたくない場合には、このあたりの設定から始めるのが良いでしょう。
ゲームの重さに応じて使い分ける
もう一つの便利な活用法は、プレイするゲームによってイメージスケーリングの使用・不使用を切り替えることです。
例えば、比較的軽いゲームで、ネイティブ解像度でも快適なフレームレートが出る場合は、ゲーム内の解像度をネイティブ解像度に設定しておきます。こうすれば、イメージスケーリングは機能せず、最高の画質でプレイできます。
一方で、非常に重いAAAタイトルのようなゲームをプレイする際には、そのゲームのグラフィック設定だけを、あらかじめGeForce Experienceで指定しておいたレンダリング解像度(例えば2560x1440など)に変更します。これにより、その重いゲームをプレイするときだけイメージスケーリングが有効になり、フレームレートを確保できます。
このように、GeForce Experience側の設定は一度決めておき、ゲーム側の設定でオン・オフを切り替えるような使い方ができると、非常に柔軟な対応が可能になります。
不要な場合はNVIDIAイメージスケーリングをオフにする
NVIDIAイメージスケーリングは便利な機能ですが、すべてのユーザーや状況にとって必須というわけではありません。もし、この機能が不要だと感じた場合は、簡単にオフにすることができます。
オフにする手順は、有効にしたときと逆の操作を行うだけです。まずGeForce Experienceを起動し、設定メニューから「全般」タブを開きます。そして、「イメージスケーリング」の項目にあるスイッチをクリックしてオフの状態に戻します。
これだけで、イメージスケーリング機能は完全に無効化されます。
では、どのような場合にオフにすることを検討すべきでしょうか。 一つは、お使いのグラフィックボードの性能が非常に高く、プレイしたいゲームをネイティブ解像度で常に快適なフレームレートで動かせる場合です。この場合、あえて画質を落としてまでイメージスケーリングを使う必要はありません。
もう一つのケースとして、お使いのモニターやテレビ自体に、高性能なアップスケーリング(超解像)機能が搭載されている場合が挙げられます。モニター側の機能で十分に満足のいく画質が得られているのであれば、NVIDIAのイメージスケーリング機能は不要かもしれません。どちらのアップスケーリングが自分の好みに合うか、見比べてみて判断するのも良いでしょう。
このように、ご自身の環境や満足度に応じて、機能のオン・オフは柔軟に選択することが可能です。
イメージスケーリングに1920x1080がない場合の確認点
前述の通り、「イメージスケーリングの選択肢に1920x1080がない」という現象は、主にお使いのモニターがフルHD(1920x1080)であることが原因です。これは仕様通りの動作であり、エラーではありません。
しかし、この状況を正しく理解するために、いくつか確認しておきたい点があります。
まず、ご自身のモニターのネイティブ解像度を再確認してください。Windowsのデスクトップで右クリックし、「ディスプレイ設定」を開くと、「ディスプレイの解像度」の項目で確認できます。ここが「1920 x 1080 (推奨)」となっていれば、あなたのモニターはフルHDです。そのため、イメージスケーリングではこれより低い解像度(例: 1600x900など)がレンダリングの選択肢として表示されます。
次に、イメージスケーリングの根本的な目的を再認識することが大切です。この機能は、あくまで「現在のモニター解像度よりも低い解像度で描画して負荷を軽くする」ためのものです。フルHDモニターでフルHDより高い解像度(例えば4K)の体験を得るための機能ではない点を理解しておく必要があります。
もし、あなたがフルHDモニターを使っていて、より高精細な映像を擬似的に体験したいのであれば、イメージスケーリングではなく「DLDSR (Deep Learning Dynamic Super Resolution)」という別の技術が選択肢になります。これは、逆にゲームをモニターの解像度より高く描画し、それを縮小して表示することで、より精細な映像を得る技術です。
このように、自分の目的とモニターのスペックを正しく把握することが、設定に関する疑問を解消する鍵となります。
まとめ:NVIDIAイメージスケーリングのデメリットとは
この記事では、NVIDIAイメージスケーリングのデメリットを中心に、その仕組みから設定方法、トラブルシューティングまでを解説してきました。最後に、本記事で解説した重要なポイントをまとめます。
- イメージスケーリングは低解像度映像を引き伸ばす技術
- フレームレート向上に効果がある
- DLSSと異なりGeForce GTXシリーズでも利用可能
- 最大のデメリットはネイティブ解像度より画質が落ちること
- 特にUIや細かいテクスチャの劣化が目立ちやすい
- 設定はGeForce Experienceから行う
- ゲーム内の解像度設定も合わせる必要がある
- 鮮鋭化機能でぼやけをある程度軽減できる
- レンダリング解像度を下げすぎると劣化が顕著になる
- 目安として85%や77%の設定から試すのがおすすめ
- 処理が増える分ごくわずかな遅延の可能性はある
- 設定項目がない場合はドライバの更新を確認する
- 表示される解像度はモニターの解像度に依存する
- フルHDモニターでは1920x1080の選択肢は出ない
- ゲームごとに設定を使い分けるのが便利な活用法